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『文房具を楽しく使う ノート・手長編』 和田 哲哉

文房具を楽しく使う 〈ノート・手帳編〉
和田 哲哉

「ステーショナリープログラム」「信頼文具舗」というサイトを
運営されている和田さんの著書。
この本はいわゆるHOW TO本ではなく、
筆者の琴線にふれたノート・手帳の紹介といったところだろうか。

筆者がいかに文房具を愛してやまないのかが文字から伝わってきて
同じく文房具好きの私としても読みながらニヤニヤしてしまった。
ノートの綴じ方、紙質などの説明から実際の使用例までと盛り沢山の内容だ。
「RHODIA」「Quo Vadis」「クレールフォンテーヌ」「モールスキン」など
割と手に入りやすいノート・手帳が紹介されているのも嬉しいところ。
ちなみにここで紹介されている手帳は
ほとんどが「信頼文具舗」で購入可能。

今回の内容は「ノート・手帳編」なので
是非「筆記具編」とかも出版してほしい。

『ホテルカクタス』 江國 香織

ホテルカクタス

ホテルカクタスという名のアパートに住む
帽子、きゅうり、数字の2の友情物語。

タイトルから想像していたのとは全く違う内容だった。
いきなり帽子にきゅうりに数字の2が出てきたから
びっくり!
なんだか妙な設定ではあるが、3人(?)とも
キャラクター立てがしっかりしていて
物語の世界にすんなりと入ることができた。

佐々木敦子さんの油絵も素敵で
ホテルカクタスのイメージをより膨らませてくれる。

『間宮兄弟』 江國 香織

間宮兄弟

35歳の兄明信と32歳の弟徹信。
独身の二人は一緒に暮らしていて、
どちらも女性には縁がない。

それでも二人はとっても楽しく生活している。
好きな音楽をかけたり、読書をしたり、
ジグゾーパズルに夢中になったり。
離れて暮らしているお母さんのことを
大切にしていて、毎年誕生日のお祝いの
食事は決して欠かさない。

大人(中年)なんだけど、少年みたいな
間宮兄弟。
そんな二人が恋をした。

これって一応恋愛小説なんだろうか?
こんな兄弟って素敵。
とってもあったかくて
お互いに思いやっていて、
自分の世界も、二人の世界もしっかり持っている。
こんな生き方ができたら素敵だな。

本間姉妹もとっても素敵。
この作品には悪い人が出てこないので
終始あったかい気持ちで読むことができた。
世の中みんなこんな人たちばっかりだったらいいのに。

そういえば坂口憲二が出てる新ドラマは
マザコン男の話らしい。
最近マザコンと呼ばれる男性がまわりにも
結構いるけど、マザコン別にいいじゃない。
自分の母親を大切にする男性って素敵だと思うな。

『村田エフェンディ滞土録』 梨木 香歩

村田エフェンディ滞土録

今から約100年ほど前に土耳古(トルコ)に留学した
主人公村田の滞在録。

物語は1899年から始まる。
村田は土耳古皇帝のからの招きで、文化研究のために
スタンブールに滞在していた。
村田の下宿には英国人の女主人ディクソン夫人、
土耳古人の召使いムハンマドがいる。
下宿仲間には独逸人考古学者のオットー、
希臘(ギリシア)人研究者のディミトリス、
そして鸚鵡がいた。

正直、世界史は苦手で1899年のトルコといわれても
どんな時代なのかさっぱりわからず、
トルコに革命があったんだ…なんて
お恥ずかしい状態の私。
そのうえ、淡々と描かれているので
何度投げだそうと思ったことか…。
(正直、1/3くらいのところで一旦投げ出した)

それでも次に予約も入っているし
きっと面白いに違いないと
苦痛に耐えながら読みすすめた。
そして迎えたラスト…。
あったかいような、切ないような…
感動してしまった。

最後まで読んでよかった…。

『ブルータワー』 石田 衣良

ブルータワー

9.11貿易センタービルの崩壊に触発されて書いた作品。
石田さんが初めて取り組んだSFだ。

脳腫瘍に侵され、余命数カ月と宣告された主人公瀬野。
ある日からひどい頭痛とともに未来の世界へトリップするように。
200年後の世界では黄魔といわれるウィルスが猛威っていた。
通称ブルータワーのなかでは暮らす階によって階級が決まっている。
しかも、このタワーにさえ住むことができない
貧しい人々はタワーの外でウィルスの恐怖に怯えて暮らしている。


前評判を全く聞かずに読み始めてしまったため、
何頁か読んだところでやっとSFと気付く。
SFは苦手なんだよねぇ。
しかも生物兵器が出てきてウィルスについての
結構細かい内容が書かれている。
これも専門知識がないので全く理解できずという状態。

それでもその辺の設定にあまり気を取られずに読めば
ストーリー自体は読みやすい。

途中でラストは想像できるんだけど
ま、石田さんの世界を楽しめる作品ではある。

それにしてもお金持ちってやっぱり高い所が好きなのね。
世間を見下ろせるからなのかしら?
あまり高いところに住んでいると良くないっていう
話をきいたことがあるような…。

『スキップ』 北村 薫

スキップ

時代は昭和40年代初め。
一ノ瀬真理子は17歳の女子高生。
家でレコードをかけながらうたた寝を始めた。
目がさめると…見知らぬ家で
夫と17歳の娘のいる42歳の桜木真理子となっていた。

目が覚めたら虫になっているのもびっくりだけど(カフカ)
いきなり25年も経ってるのはビックリ!
眠り姫なら王子様が目覚めさせてくれるんだろうけど
真理子はほんの一瞬眠ったつもりが
いきなり25年もたってて、しかもその間の記憶が全くなし。

私だったらかなりショックだと思うな。
逆なら大歓迎だけど…。

それにしてもこの主人公、高校の国語の教師だったんだけど
このあいだまで高校二年生だった子がいきなり
高校三年の授業ができちゃうなんてすごい!
学級日誌の生徒とのやり取りの文章なんかも
とても高校生とは思えない。

ま、そういう細かいことは別としても…。
「わたしのモットーは<嫌だからやろう>なの」
という真理子。
夫や娘の美也子に助けられながら、
新しい境遇のなかで奮闘している。
そしてそんな真理子の姿に、夫や娘も新鮮な気持ちで
自分を見つめ直していく。

もう、年だから無理だとか
今さら出来ないとか思っている自分の怠け心に
カツを入れてくれる作品だった。

『THE STUDY OF COMME des GARCONS』 南谷 えり子

スタディ・オブ・コム デ ギャルソン

1981年にパリコレデビューしてから2003年までの
コムデギャルソンの歴史を顧みたもの。

内容的にはコムデギャルソンの絶賛本というところ。
ギャルソンファンにはたまらない内容だろう。
今までのショーの写真や、一部服のパターン画も
紹介されている。

私は川久保玲よりも山本耀司派なのだが、
この二人結構比較されるている。
どちらも日本が誇るブランドである。
二人とも慶応大卒で一時期つきあっていたらしい。
やはりお互いに感じ合うところがあるのだろう。

コムデギャルソンの服は、決して着やすいとは言い難い。
服の個性に負けないだけの自分というものを
しっかり持って袖を通さなければ
服が独り歩きしてしまう。

先日読んだ江國香織の『間宮兄弟』のテーマでもあるが
自分らしさを持ち続けるのって難しい。
ともすれば右にならえになってしまいがちだ。
ヨーロッパの既存の美の価値観のなか
パリコレに殴り込みをかけた(?)
川久保さんの創造性に改めて驚かされた。

『硝子のハンマー』 貴志 祐介

硝子のハンマー

舞台は六本木センタービルの最上階。
株式上場を控えた介護会社ベイリーフの社長が
密室状態の社長室で殺されていた。
弁護士の青砥純子と防犯グッズショップの店長の榎本径が
密室の謎を解いていく。

正直ちょっと中だるみしてしまった。
トリックを解明しようと色々な方法が
検証されていくのだけど
(なかには青砥純子の素人発想もあり)
なかなか当てはまらない。
じらされるとかなりイライラする方なので
このじらしはちょっと長すぎた!

一章の展開の遅さに比べると
二章はものすごいスピードですすんで
結末へとたどり着く。
じらされたあげくの結末がこれまた
むむむ…というところ。

ただ、榎本径はちょっと魅力的だった。
クールそうで、ちょっと可愛いところもあって…。
ぜひとも再登場をお願いしたい!

『小生物語』 乙一

小生物語

WEB上の日記を本にしたもの。

とにかく面白い。
最初っから最後までとにかくニヤニヤしっぱなし。
周りにいた友だちにも朗読してあげて(無理矢理)
「ね、ね、面白いやろ!面白いやろ!」(これまた無理矢理)

どこまでが現実でどこからが虚構なのか
どれが乙一さんのことで、どれが小生のことなのか
だんだんわからなくなってきて…
それがまた楽しい。
本文についての注釈がそえられているのだけど
これが何頁にもわたるものもあったりして
どっちが本文だかわからなくなるくらい。

とある場所で金魚を飼うお話は
どーしてそこまで想像がふくらむかナァと
感心すらしてしまった。
ガンダルフの話も笑えた。

ひと通り読み終わってあとがきで
またもうひと笑い。

とにかく久しぶりに笑える本だった。

『百万の手』 畠中 恵

百万の手

燃えさかる家に飛び込み焼死した親友。
親友を死に追いやった放火犯探しが行き着く恐るべき真相とは?


放火事件の真相を追っているうちに
話はなんだかとんでもない方向に進んでいく。
ええええ?こーんな壮大な話になっちゃうの?って感じ。

最初は亡くなったはずの親友が携帯電話のなかに現れて
夏貴と二人で事件の真相解明か!という展開だったんだけど
なんだか途中からすっかり違う方向へ話が向かってしまった。
まるで前半と後半で全く違う作品かのように…。

冒頭での母親の夏貴に対する過剰な執着は
鳥肌物の気持ち悪さだったのだけど
いつの間にかそれもなくなっちゃてるし…。
重要な役だと思われた登場人物が
どんどん途中退場してしまって
え?あの人どうなったの?通りすがりの人?
という感じだったし…。
色々な問題や登場人物たちが中途半端に利用されて
収まりがつかないまま宙ぶらりん状態のままで
物語は終わってしまっている。

社会的テーマが盛り込まれている割には
その辺の突っ込みがあまいし…。
犯人の動機もなんだか納得しきれないところがある。
多くのプロットを盛り込もうとしすぎて
アウトオブコントロール!というところだろうか。

タイトルもちょっと思わせぶりというか
こじつけというか…。
作品中にタイトルはこういうところから
つけられたんだよ…と無理矢理説明を入れているのでは
と思われる部分も何カ所かあった。

ただ、母親の再婚相手となる東はキャラがたっていて
いい味だしていた。
最初は胡散臭かったのだけど、実はとっても頼りになる人。
後半、夏貴と東がコンビを組んで真相究明するようになってから
ぐっと面白くなった。
結局は、夏貴と東をもっと描き込んでこの二人をメインに
もってくればもっと面白かったのでは?

ま、この味のあるコンビの魅力に引っ張られて
結局のところは一気読みしてしまったのだけど…。
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