『死神の精度』 伊坂 幸太郎 | うさぎの本棚

『死神の精度』 伊坂 幸太郎

死神の精度
死神の精度
伊坂 幸太郎

「俺が仕事をするといつも降るんだ」 クールでちょっとズレてる死神が
出会った6つの物語。音楽を愛する死神の前で繰り広げられる人間模様。
『オール読物』等掲載を単行本化。

待望の伊坂さんの新刊は死神が主人公。
彼の名前は「千葉」。調査対象の人間によって年齢や姿・職業は
その都度変わるが、名前だけはいつも同じ。情報部から与えられた
情報を元に対象となる人間を7日間調査し、「可」もしくは「見送り」
の判断をくだす。可とされた人間は調査が始まって8日後に死ぬことに
なるので、それを見届ける。これが調査部の死神である彼の仕事。

「死神」と聞くと黒いマントをはおって(ちょっと古い?)恐ろしい
イメージがあるけど、見事に裏切っている。彼の仕事の仕方は
サラリーマン然としていて、調査部に対しての不平をもらしながら、
それでも淡々と仕事をこなしていく。死神も組織の中で仕事をして
いると大変そうだ。

そんな彼らの楽しみは「ミュージック」。仕事の合間に時間ができると
CDショップで視聴をしている。一心不乱にヘッドフォンを耳にあて、
ちっとも立ち去ろうとしない客がいたらおそらくは彼ら死神だそうだ。
千葉は、音楽を「ミュージック」というあたり、クールなのだけど、
ちょっとズレている。「年貢の納め時」と言われ、「年貢制度は今も
あるのか?」。「あんたたちホモかい」と言われ、「こいつは
ホモ・サピエンスだが、オレは違う」と答えてみたり…。人間社会の
常識に欠けていて、本人は大まじめなのになんともおかしい会話に
なっているのが、微笑ましい。

彼は雨男で、仕事をするときにはいつも雨降り。実はこの本は自腹購入
しようと何度か書店に出かけようとしたのだけど、その日は決まって
いつも雨だった。もしかして千葉が雨を呼んでいたのか?

そして…伊坂作品でのお楽しみ、他作品とのリンクも忘れちゃいけない!
今回もしっかり登場。やっぱり伊坂作品は出版順に読まなきゃ!
作品内リンクもとっても素敵。最後まで読み終わって、表紙を見ると
そうか、なるほどーーと頷いてしまった。モデルの近藤良平さん
(コンドルズ)がこれまたいい味をだしている。

今回もしっかり楽しませてもらった1冊。
しかし! そろそろ短編集ではなく大作を期待したいものだ。